あなたの未来予測力を診断する、謎解きストーリー【前編】 ~入社3年目にリストラにあった一橋OBが、未来で “不労” を手に入れたら。~

「カフェオレのSを一つ。」
「200円になります。」
「1000円で。…あれ?」

佐竹が手に持っていた1000円札は、いつのまにか金額を示す数字が「10000」へと変わっていた。見間違いかと思い、もう一度よく見たが、確かに桁がひとつ増えている。佐竹は少し首をかしげたが、もともと1万円札だったのだろうと思い直した。しかし次の瞬間、佐竹はこれが従来のお札とは似て非なる代物であることに気付く。

「こちら9800円のお返しでございます。」

手渡されたお札には「9800」と書かれていたのだ。どうやらこの紙幣は額面金額が変化するらしい。22世紀ともなると、技術の進歩も目まぐるしいなと感心しつつ、中途半端な額の紙幣をしげしげと眺めながらカフェオレ片手に店を出ると、その瞬間再び佐竹は目を疑った。確かに「9800」円だった額面金額が、「980」円へと減ったのだ。つまり、実際のところ佐竹は20円で200円のカフェオレを購入したことになる。踵を返して再度コーヒーショップに入店すると、その表示は「4900」円に変わった。

(価値まで刻一刻と変化している…)

佐竹は慌てて隣のアパレルショップへ入店した。すると紙幣はコーヒーショップにいたときよりも、はるかに大きな数字を示したのである。そういえば先ほどコーヒーショップで前に並んでいた男性は、500円札を持っていたような気がする。彼の腕にはロレックスが光っていた。

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そこで佐竹は確信した。額面金額がその時々によって変わる紙幣には、恐ろしく大きな可能性を秘めたテクノロジーが利用されていることに。そして、この魔法のような紙幣を手にした人間が享受するのは、決して財布の中のお札が一枚で済むといった小さなメリットだけではないことに―。

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【問題】
ストーリーに登場した新時代の貨幣は、一体どのような機能を持っているのでしょうか。近未来にタイムスリップしたつもりで自由にお答えください。

正解は、物語の続きを読んでいけば分かります。

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<第1章>リストラ、そして転職。

「学生時代からエネルギーへの関心は強く、短期留学経験もありTOEICも890点なので、海外勤務も問題ございません。」
「どれだけ思いが強くて学力が高くても、実務経験が実質1年しかなくて、国内でしか勤務したことがないとなると、うちはちょっとねえ…」

某エネルギー関連企業に勤めていた佐竹武史(25歳・無職)は、今日も転職活動に励んでいた。

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佐竹は元一橋ラグビー部。あだ名はタケ。佐竹の竹なのか、武史の武なのかは本人にも分からない。就職活動では、OB訪問で出会った先輩のエネルギーに対する熱い思いと、グローバルに活躍する姿に惹かれて、某エネルギー関連企業への入社を決めた。しかし、一生安泰だと思って就職した矢先、中国経済の減退により起きた逆石油ショックの影響で、世界中が不況に陥った。佐竹の勤めていた会社も例外なく打撃を受け、大幅に人員を削減。一流企業だっただけに、リストラのニュースが朝刊の一面を飾った。佐竹はその朝、今日から自分が無職だということがにわかには信じられず、コーヒー豆のかすをリストラが報じられたその新聞で丸めて捨てた。

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2年の冬、人気ゼミの抽選に漏れ、女の子が一人もいない環境経済のゼミに不本意ながら入った佐竹だが、思いのほかエネルギー問題は彼にとって面白く、二年間一生懸命学んだ。それだけエネルギーに強い思い入れがあったわけだが、リストラに遭った今、そんな若き日の情熱はすっかり忘れてしまっていた。転職活動を行うも、研修が終わってまだ1年しか実務経験を積んでいない佐竹にとって、前の職場を超える良い条件はなかなかない。佐竹は無念さと焦りで苛立ちを隠しきれなくなり、とうとうインゼミで出会ってから3年付き合ってきた彼女にもフラれてしまう。

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「くそっ…。どうしてこうもエネルギーに振り回されなきゃならないんだ…もういっそのこと働かなくても食べていける世の中が来れば良いのに…」

そんな折、佐竹のスマートフォンに一通のメールが届く。

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<第2章>一通のメール

「一橋大学・環境経済ゼミOBOGの皆様へ、実験協力のお願い【謝礼あり】」

普段は読まずにアーカイブする出身ゼミからのメールであるが、「謝礼」というワードにつられて開く自分が情けなかった。

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「環境経済ゼミOBOGの皆様

お世話になっております。14期のゼミ幹の前田です。皆様いかがお過ごしでしょうか?

本日は、行動経済ゼミとの合同ゼミにおける、実験協力のお願いがありご連絡いたしました。実験は一週間を予定しており、わずかではありますが報酬もご用意しております。お忙しいところ恐縮ですが、実験をより有意義なものにすべく、一人でも多くの方にご協力いただきたいと思っております。

以下、実験内容概要

日程:11月中

時間:9:00-12:00、13:00-16:00、17:00-20:00

場所:一橋大学西キャンパス 第二講義棟204号室

報酬:一日あたり一万円

趣旨:VRを使って近未来都市の世界に没入していただき、現在の行動とバーチャルの世界での行動を比較します。

もしご協力いただける方は、本メールの返信という形でご連絡いただけますと幸いです。
なお、1月に開催予定のOBOG会については、また追ってご連絡差し上げます。
どうぞよろしくお願いいたします。

14期ゼミ幹 前田」

時間はあるが金を稼ぐ手段の無い佐竹にとって、この依頼は渡りに舟だった。実験内容も面白そうであり、転職活動の気晴らしに非現実世界に没入するのも悪くない。早速参加表明のメールを送ると、程なくして詳細についての連絡が来た。

後編に続く…(10/14日公開)

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