TOEIC400点からのシリコンバレー~シリコンバレーと日本のイノベーション~

読者の皆様、新年明けましておめでとうございます!2017年最初のコンテンツは、シリコンバレー取材の第2段。シリコンバレーでベンチャー企業の支援事業をなされている、トーマツベンチャーサポートの木村将之さんを取材しました。シリコンバレーと日本の違いについて。イノベーションについて。そして木村さんのキャリアについて。盛りだくさんの内容をお届けいたします!

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日本と世界の架け橋に

ーまず、今どのようなお仕事をされているか教えてください。

シリコンバレーに住んで、日本の大企業とシリコンバレーのベンチャーで一緒に新しい事業を創ることをやっています。よくオープンイノベーションと言われているやつです。今、世界で3000社くらいベンチャーを支援していて、これらと日本の大企業を組み合わせてグローバルを席巻する事業を生み出すために頑張っています。

 

ーシリコンバレーでは、具体的に、どのような事をされているのですか。
シリコンバレーでは、SUKIYAKIというシリコンバレーと日本企業の協業による事業開発のためのコミュニティを運営してます。日本の大手企業50社が参画していて、日本企業にシリコンバレーのベンチャーを定期的に紹介する活動等をおこなっています。又、日本の大手企業に対して、現地ネットワークの紹介、ベンチャー企業との交渉、協業ビジネスモデルの立案、推進をサポートするコンサルティングをしています。

 

ーなるほど。日本の企業と海外のベンチャーの架け橋というわけですね。面白そうですね。

確かに面白い(笑)。ただ、すごく課題も多いんですよね。日本の企業って、基礎研究とか自社のR&D(研究開発)、大学の研究室と組んでの研究はやってきたし、業績を上げてきた企業を買収することも結構うまくやってきたんですよ。たけど、ベンチャーと緩やかに連携して、業務提携という形で一緒に何かを創るっていうのにすごく苦手意識を持っているんです。

今イノベーションの起こし方として主流になっているのは、大企業とベンチャーがR&D(研究開発)とM&A(企業買収)の中間的な性格を持った組み方をして事業を進めるということ。日本企業もシリコンバレーベンチャーとこれをやりたいわけなのですが、実はこちらでは日本企業の評判があまり良く無くて。

 

ー評判があまり良くない、ですか。

シリコンバレーでは、「Pay it forward」、別の言葉で言うと「Give&Giveの精神」つまり、先に相手のために何かとしてあげる精神が重要となります。そのような環境の中、日本企業は相手先からTakeするばかりで、情報収集ばかりをして事業に繋がらないとの評判がたってしまったしまった時期がありました。

 

理由の一つは、シリコンバレーと日本企業のスピード感が大きく違うことです。例えばベンチャーは投資家とかエンジェルからの出資を受けて大体18ヶ月から24ヶ月の間で資金調達して活動します。1分1秒命を溶かしながら事業としている感覚です。、一方で、日本の大企業はコンセンサスを非常に大事にしますから、何か決めるときには合議制での意思決定が必要となります。

そのため、どうしても時間がかかってしまう。又、日本企業は意思表示を行うことに対してとても慎重なので、商談相手から見て何がしたいか分からない事も多い。これでは両者が一緒に何かをやるっていうのは難しいので、これを解決するために、日本の大手企業にコンサルティングを行っています。

 

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経営をサポートできるような人間になりたい

ーでは、木村さんのバックグラウンドについてお伺いします。学生時代は会計士を目指されていたとお聞きしましたが、それはなぜですか?

自分の父も経営者で、大阪で漬物の卸問屋をやっていたことですね。でもやっぱり卸しって淘汰されていく産業なので、会社がどんどん苦しくなってしまって、父の代でたたむことになってしまいました。経営を転換するチャンスはあったのに、結局変える事はできなかった。その過程を見て、良い経営をすることや経営者の参謀は本当に大事だなって思ったんです。そこから経営をサポートできるような人間になりたいと思い始めて、数字に強く、会計や経営に興味があったので、アドバイザーに近い立場の会計士を目指しました。

 

ー一橋に入る前からそういう風に考えられていたんですか?

今思えば、入試のときには経営アドバイザーになりたいと書いてましたね。後期入学だったので、入試科目に小論文があって、そこには『もともと理数系が強いのでそれを生かした経営アドバイスがしたいから会計士になりたい』みたいなことを書きました。

 

ーでは、会計士としてどんなことができたら木村さんにとっての成功だなって思い描いていたんですか?

アドバイザーでも何かバックグラウンドが必要だと思っていたので、数字とか会計の知識を反映させて経営が良くなればそれが成功だと思っていましたね。当時は(笑)。

 

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ベンチャーが新しい世界を創っていく

ー『当時は』ってことは考え方に何か変化があったということだと思うのですが、どういったターニングポイントがあって、どう変化したんですか?

経営のサポートをしたいという目標があったので、ベンチャー企業を大きくするためのサポートに力を入れていた有限責任監査法人トーマツに入社し、初めは、計数管理、組織構築のコンサルをやっていました。それはそれで良かったんですけど、やればやるほどもっと踏み込んだサポートがしたいなって思うようになって。

それから、ベンチャーが伸びるのには売り上げとお金と人が必要ってなったときに、自分が一番貢献できそうなお金の部分、つまり資金調達の支援をやるようになりました。それをやり始めたら、そこでさらに深い課題が見えてきました。お金を引っ張った後でも企業があまり成長していないことに気付いたんです。そこで事業そのものに興味が向いてきて、事業サイドのアドバイスするようになりました。

 

ーベンチャーのビジネス支援に関わっていくようになったということですが、ベンチャーやベンチャーに興味が移った理由、そこが大事だと考えた理由はなんですか?

やっぱり新しい産業を創っているのはベンチャーだし、自分の父が経営者だったので、新しく挑戦している人を応援したいなっていう気持ちがあったからです。それまで監査法人がサポートするのって上場直前の会社が多くて、そこからコンサルに入って上場できる体制に整えることが多かったので、それより前のステージにすごく興味が湧いて。初めはそんな感じです。

 

ーベンチャーが新しい世界を創っていくっていうのは、例えばどんなエピソードがありますか?ベンチャーが本当に世の中を創っているのかどうか懐疑的な一橋生が非常に多いと思うので、お聞かせください。

そうですね。例えばGoogleって1998年にできたベンチャーで、スタンフォード大学にあった情報検索の技術を転用して生まれました。今ではそんな彼らが時価総額No.1を争っているような状態で、皆の生活を豊かにしています。

あとは、テスラモーターズ。こちらも2003年から始まったベンチャーですが、公道でテスラの自動車が走っているのを見たり、テスラが部分的な自動運転車を走らせたりしているのを見たりすると、今新しい電気自動車っていう潮流を創っているのは間違いなくテスラだなって思います。このように、ベンチャー企業は本当に大きな存在感を持っています。

 

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日本の今、シリコンバレーの今

ーシリコンバレーってどんなとこですか?

シリコンバレーは、Tech系ベンチャー企業の聖地です。アメリカ西海岸、サンフランシスコの南からサンノゼにかけての人口約300万人程の地域を指します。1年間で、日本の約40倍にあたる約5兆円のベンチャー投資が行われています。Tech系の職種の外国出身者比率は60%を超えていて、色々な国から腕に自信のある挑戦者が訪れる大リーグみたいなところです。皆が使っているFacebook,Twitter,Googleもこの地から生み出されています。

 

ー日本のベンチャーの状況はどうですか?

日本のベンチャー企業にも、以前に比べお金が集まるようになってきました。自分がサポートし始めた2010年前後は、シリーズAのファイナンスでかなり上手くいって数千万っていう規模だったのが、2015年現在で数億円、場合によっては数十億円集めるっていう傾向ができています。フリマアプリのメルカリのように、日本で大きな資金調達をして世界に挑戦することもできるので、選択肢はすごく増えたと思います。

 

ーでは、今後日本のベンチャーのどんな役割を期待しますか?

初めからグローバルの市場を狙うようなベンチャーが増えたら良いなと思います。日本は技術とかハードウェアに関してはすごく強いので、そこでは戦えるんじゃないかと。日本が強身を持つ、、ロボティクスを含むハードウェア・車・医療技術周辺の起業が増えると良いんじゃないかと思いますね。

 

ーこれまでの質問や木村さんの『日本発で世界を席巻する事業を生み出すことに貢献する』ミッションから、木村さんがいかにグローバル展開を重視しているか分かりました。これについて、もう少し詳しく教えてください。

人口ベースで考えても、日本は1億2千万人で世界は70億人。マーケットの大きさは明らかに違いますし、日本を元気にするためには、昔のように世界中で必要とされる物を造り、ベンチャーとして産業をリードする事が必要だと思うんですよね。

 

ーたとえばどういう産業をベンチャーがリードする必要があるとお考えですか?

技術的な方向でいくと、日本が今得意とする産業、ハードウェア・車・医療技術らへんです。もう1個、技術転用でいくと、ロボットが面白いんじゃないでしょうか。ロボット技術は自動車の技術と近い部分があるので。

 

ービジネスモデル型のイノベーションで世界を獲るのはやっぱり難しいですか?

そうですね。特にシリコンバレーをはじめとするイノベーションの先端地域では、ユーザーが必要とするものを創っていたら最終的には規制が変わるという事例があります。例えば、UberとかAirbnbも後から規制が追いついてきているし、シリコンバレーでは、13社の会社が自動運転車を公道で実験しているという状態なんですけど、日本だとなかなかそこまでは難しい状況になっています。

ただ、日本にもチャンスはあると思います。ビジネスモデルは、社会環境とか経済環境の課題に対して生まれるので、日本が他国より深刻な問題として抱える高齢化社会や地域の過疎化に対する解決策を生み出して、それを世界に輸出するのも一つの方法だと思います。

 

ーテクノロジーの面だけじゃなく、法律とかインフラなどの環境要因も変わらないとビジネスモデル型イノベーションは難しいってことですね。

環境もそうだし、マインドも変えないとだめですね。アメリカだと例えばベンチャー企業が大手企業と実証実験を3件ぐらい成立させて、ベンチャーキャピタルから大型の資金調達をするんですよ。ここで大事なのは、前例がないものを受け入れないのではなく、とにかくやってみようっていう投資家、大企業の存在なんです。

日本だと規制に引っかかっているものが出たらVCの投資判断の過程でバッテンが付くんですけど、これを『将来規制が変わるかも』と思って投資する投資家も必要です。『前例がないから、他がやってないから受け入れない』じゃなくて、『一緒にやってみよう』っていう姿勢で応援する大企業も必要です。

 

ーシリコンバレーだと大企業のスタンスとして新しい企業と一緒に変えていこうという感じなんですね。木村さんは、これが何に起因するとお考えですか?

テクノロジーの進化のスピードが上がっています。消費者はコモディティ化した商品を買わなくなってきており、ニーズも細分化しています。大企業自身、変革して新しい技術、アイディアを取り入れていかないと自分たちが競争に敗れていくというのが分かっているので、新しいことにチャレンジする重要性が増しているのです。

 

ー日本ではシリコンバレーと比べてそういう流れっていかがですか?

日本も外部との連携に前向きに変わってきていると感じます。一つの表れとして、企業がファンドを設立してベンチャーに協業のための出資を行うコーポレートベンチャーキャピタルが挙げられます。2000年から2005年にかけてはメーカーのコーポレートベンチャーキャピタルの設立が相次いで、2005年からはその次の産業を創っていくであろうインターネット系の会社がベンチャーキャピタルを色々作りました。

2010年頃にを越えるとゲーム系の企業が作って、2012年頃からはを越えると放送局が。最近だと金融系、小売系が動き出したりしていますね。ベンチャーと協業するためにアクセレーションプログラムを立ち上げる会社が日本でも増えてきていることにも、その流れはあらわれています。

 

ー日本では、大学からの技術の活用が進まないと聞きます。この点についてどう思われますか?学生側も、自分たちの研究や技術を世の中で役立つものに転用したいっていうマインドを持つことも大事ですよね。

そうですね。研究者側が技術を商用化するインセンティブがあるかは重要だと思います。日本だと教授がアカデミックな評価を優先させますよね。アメリカだと商用化が大学からの評価に入ってくるので、その違いが大きいですね。又、アメリカだとテクノロジーを商用化するTLO(Technology Licensing Office)が各大学にあり、商用化をかなり積極的に推し進めています。日本でもテクノロジー商用化の取り組みが進みだしているのですが、過去の実例が多くないため、検討に時間がかかってしまうという課題があります。

 

ー日本でオープンイノベーションがうまくいっている事例ってありますか?

トヨタ自動車とAI、自動運転技術を開発するPreferred Networksの事例や、ダイワハウスとリハビリ、歩行サポート用のロボットスーツを提供する筑波大学発のサイバーダインの事例等は好例かと思います。

アメリカでは、大学の技術や大企業で培った技術を活用したベンチャー企業が多いのですが、現状、日本のベンチャーはサービス型のベンチャーが多いですね。サイバーダインのような大学や大企業の研究所からのスピンオフが多く生まれてきたら、更にイノベーションが更に加速すると思います。

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