世界に日本食を広め、人々の生活を豊かにしたい【商社マンからラーメンマンになった男の物語3】

三菱商事、MBA留学を経て、コンサルティングファームへ転職、現在はマレーシアの寿司チェーンレストラン「Sushi King」の経営に携わっている多胡雄人さん。第一回では、クリムゾンから三菱商事、MBA留学へ至った経緯を。そして第二回では、人生の転機となった、MBA留学時代の「ラーメン起業プロジェクト」についてお聞きしました。商社マンからラーメンマンへ。そして三菱商事を退社して、自由の身となった多胡さんの物語もいよいよ最終回。その後、多胡さんがどのようなキャリアを歩んでいるのか、将来のビジョン、そして学生へのメッセージを語っていただきました。

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ニートからコンサルを経て、マレーシアの寿司チェーンへ 

ー辞めてから、どのように転職活動をしたのでしょうか?すぐラーメンへいく気持ちはなかったんですか?

多胡 「ラーメンをやるならアメリカという条件でしたし、一度帰国してしまったこともあり、ビザ取得への状況は悪くなっていました。なので第二新卒のつもりで、再びOB訪問しながら、自分の琴線を再確認しました。ただ少し焦ったのは、会社を辞めた三週間後に第二子ができたのが発覚したことです。病院で検査を受ける時に、職業欄に無職と書くのは少ししんどかったですね(笑)。

僕は起業プロジェクトを通じて、やりたいと思ったことが二つありました。一つが、日本のいいものを海外に広め、人々の生活を豊かにしたいということ。もう一つが、自分自身が”0から1”を作る経験をしたことで、日本でも起業や新しい挑戦をする環境を作っていきたいということでした。この軸をもとに選択肢も二つあり、前者なら、マレーシアで寿司チェーンをやっているSushi Kingという会社で、海外へ日本の食文化を広めること。後者なら、ドリームインキュベーターという戦略コンサルとベンチャーキャピタルを併せた会社で、日本にスタートアップが育つ環境を創ることでした。

当時自分の中でいくつか基準を定めた結果、ドリームインキュベーターへ転職しました。子供が生まれる間近だったので、日本を離れたくなかったのと、様々な業界を覗いてみたいというのが主な理由でした。今振り返ると、将来のキャリアへのリスクヘッジの色合いが強い、若干逃げのような選択だったなと思います。」

ーコンサルへ転職した多胡さんが程なくしてSushi Kingへ転職されたのはなぜですか?

多胡 「ドリームインキュベーターでは大企業の新規事業支援をやっていて、最初はとにかく慣れるのが大変でした。しかし半年くらいたって落ち着いてきた時に、自分で決めて自分でやっていくのが、本当にしたいことだと改めて気づきました。アメリカに残らなかったこと、戦略コンサルへ行ったこと、人生で2度逃げの決断をしたことを反省して、もう逃げの選択はやめようと決意しました。」

ーなるほど、それで「Sushi King」へ行き着いたわけですね。素朴な疑問ですけど、ラーメンじゃなくて、寿司なのですね?

多胡 別にラーメンにこだわっていたわけではなくて、ラーメンを含めて日本の食文化を広めたかったので、当然寿司でもよかったということです。Sushi Kingは、日本人が海外でやっている外食チェーンの中で、一つの国だけで100店舗以上展開している稀有な企業です。またその親会社であるTexchem Restaurant Systemsは日本の外食チェーンが東南アジアに進出する際の受け皿としても機能しており、色々できることも多そうだと思いました。」

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(写真 Sushi Kingの店舗スタッフと多胡さん)

ーこういう変遷があって、Sushi Kingへ行かれたんですね!ではSushi Kingでやっていること、今後のビジョンは何ですか?

多胡 Sushi Kingでは商品部部長とベトナム事業責任者を担っています。商品部では、新メニューの開発や購買、品質管理を行っています。マレーシア国内でも、これからまだまだ成長するポテンシャルがあるので、自分のポジションからできることを、どんどんやっていきたいですね。ベトナム事業は2014年にスタートしたものの、所得レベル、味覚の違いにきちんと対応できておらず、まだ事業としても形になっていないので、新しいことにどんどんトライしながら一日も早く軌道に乗せたいと思っています。

Sushi Kingの海外展開を考えると、順当にいくと次はインドネシアになると思いますが、やっぱりアメリカも狙いたいですよね。アメリカでも寿司店はあるけど、ラーメンと同じで、大都市に美味しいお店が集中しており、味やクオリティの格差も大きい。この間には大きなマーケットがあると思っています。自分の中で『日本食×世界という軸』はもうブレないので、それができる箱で、日本食を広め、人々の生活を豊かにしていきたいです。

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人生の満足度を上げるために必要なコト

ーありがとうございました!最後に学生に向けてメッセージやアドバイスをお願いします。

多胡 「やはり最初にお話しした3つが大事だと思います。

・知らない価値観・考え方に出会う機会をつくる(ユニバースを広げる)
・機会を比較する
・体験する

正直、僕もやりたいことが定まったのは2016年の1月で、入社してから12年かかりました。早く行動を起こしたほうが早く見つかる可能性も高くなると思います。そのためにも、たっぷりと時間のある学生時代はすごく適していると思います。僕が一度会社を辞めたのも、やはり仕事をしていると、忙殺されてゆっくり考える時間がなかなか取れないからです。この3つのプロセスを通じて、何が自分の琴線に触れるのか、なぜ楽しいのか、という”表層”と、その原因である自分の価値観である”深層”を結びつけていく作業を、丁寧にやってことが大切です。大変ではありますが、それが

『”What matters most to you, and why?”(あなたにとって一番大切なことはなんですか?それはなぜですか?)』の答えを見つけ、自分の人生の満足度を上げるためのコツなんだと思います。自分の価値観をみつける作業をしてください。そしてそれを大事にしてください。他人ではなく、自分のやりたいことをやるというのが一番大切です!

どうもありがとうございました。」

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 今回のインタビューは、多胡さんが出張で日本に帰国している合間を縫って行われました。お忙しい中インタビューを引き受けてくださり、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

インタビュアー追記:

人生の満足度を上げるためのコツとして「自分の価値観を知ること」、そのための「3つのプロセス」の話が何回も登場していましたが、自分のやりたいことを見つけるには、もう一つ「極める」というプロセスが必要なのだと思いました。

「百聞は一見にしかず。」
「百見は一触にしかず。」
なら、
「百触は一極にしかず。」

ものごとの表層を撫でるだけなら誰でもできます。しかし他の人がやらないレベルで何かを深めることで、初めて見えてくるものがあるのもまた事実だと思います。多胡さんは、起業のプランを立て、ご自身でラーメン作り、実際にオペレーションをして、とことんまで「深める」ことで、自分が本当にやりたいことに辿りつきました。

別に何だっていいと思います。食べ物でも、遊びでも、勉強でも。私の友人は日本酒好きが高じて、田舎に行って日本酒をお米から製造するプロジェクトに参加していますが、だからこそ、ただの日本酒好きとは一線を画す、知識や経験を有していますし、端から見ても楽しそうです。何かを深めるプロセスは、自分を深く知るプロセスでもあるのでしょう。

ぜひこれを機に、自分の少しでも興味のあることは、まずリアルに体験する機会をもち、その後、深めていってほしいと思います。

HITPORTでは、様々なキャリアの人にインタビューへ行き、発信するメディア活動や、講演会を開催するイベント活動、また現役生に対するキャリア・コンサルティング活動を行っています。多胡さんが仰るところの、様々な人に会ったり、自分の興味のあることを知ったりできる機会だと思いますので、ご興味のある方は気軽にお声がけください。

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