ベンチャーキャピタルは “企業版スーパーバンド” を生み出すクリエイティブな仕事【中嶋淳-後編】

インターネット黎明期(1993年~)からインターネット産業に携わり、現在ベンチャーキャピタリストとして活躍するアーキタイプ株式会社代表取締役の中嶋淳さん。前編では中嶋さんのVCになるまでと、中嶋さんが運営するVCの特徴をお聞きしました。

後編では、VCという仕事について、今注目すべきテクノロジーやビジネス、今後のビジョン、学生へのメッセージを語っていただきました。

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VCはスタートアップのプロデューサー

ーVCってどんな仕事ですか?

中嶋 VCと一口に言ってもその実態は様々ですが、私がいつも言ってるのは音楽プロデューサーというたとえです。私は「尊敬する人は誰ですか?」と聞かれたらビートルズのプロデューサーであったジョージ・マーティンと答えています。彼は、荒削りだが優秀だったビートルズのメンバーを見出し、音楽の作り方を教えたり、時には一緒に演奏したりして、本当に良いものを共に創り上げていきました。

これをVCに当てはめると、一緒にプロダクト・サービスを考える、手を動かす、営業するということになります。投資して初期の段階では会うことも多いですがメンバーがセルフプロデュースできるようになったら関与することも減ります。でも相談にはいつでも乗るので、コーチ&メンターでもあり、メインはプロデューサーといった感じですね。

(Photo by “Drew Patrick Miller” from Unsplash)

一方で若手が最初からVCになることができるのか?という議論があります。ジョージ・マーティンも元々ミュージシャンだったからプロデューサーができたのではないかと。確かに業界経験や起業経験がない人がいきなりプロデューサーになるのは難しいかもしれません。

しかしこの議論に対して私がいつも引き合いに出すのが、現在サッカーのプレミアリーグ・マンチェスター・ユナイテッドの監督を務めるジョゼ・モウリーニョという人物です。彼は世界最高峰の監督と評価されている監督の一人ですが、異例なのはプロサッカー選手の経験がない点です。彼は一度体育教師になるも、指導者の道を志し、通訳としてFCバルセロナなどで監督の通訳をしながら、一流の術を盗んできたのです。彼の細かい話は割愛しますが、プロの経験がなくても、死ぬほど勉強して、学べば、監督として一流になることもできるのかもしれません。

VCも同じで、ある起業家よりもその業界に関する深い知識や明確なKPI(目標数値)が頭に入っていれば相談相手になります。必ずしも企業の経営者である必要はなく、たとえばヴァーチャルリアリティ(VR)の分野なら、VR業界の現状や世界的な技術の動向、価格、顧客の獲得コストなどです。私が若かった頃はインターネットすらなかったけど、今は興味・関心のあることを、いくらでも調べることのできる時代ですから。

ー音楽プロデューサーやサッカー監督の比喩が分かりやすいですね。VCのやりがいや醍醐味はどんなところに感じますか?

中嶋 情熱的な若者や経営者と仕事をするのはいつもやる気が出るし、逆にこちらが少しでも気を抜いていたらすぐに見透かされます。株式上場とか買収も一つのステージですが、経営者と一緒に考えたことやビジネスが、世の中に広まっていくのが一番嬉しいですかね。音楽プロデューサーが、曲がヒットして売れたら嬉しいのと同じです。

これは私の仮説ですが、スタートアップがもしクリエイティビティを必要とするなら、そこにはVCのような存在が必要なのだろうなと思います。世の中のクリエイティブな産業を見てみると、本や漫画における作家と編集者、映画における監督とプロデューサー、音楽におけるミュージシャンとプロデューサーのように、肩を並べて、作品だけでなく、仕組み全体を考える存在がいます。つまりプロデューサーは作品をよりクリエイティブなものへと昇華するために必要で、VCとはそういう存在なのだと思っています。

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注目しているテクノロジーとビジネス

ーVCはクリエイティブな仕事でもあるのですね。少し細かい話になりますが、テクノロジーの進歩が早く、高度にもなっている今日、テクノロジーへのキャッチアップはどうされていますか?

中嶋 分かっている人に聞きに行くのが一番です。もちろん基本情報、キーワードの予習はしますが、それでも分からないことを質問しにいきます。優秀な人は、人に説明する能力も高いので、それを聞いて自分も人に説明できるようになればいいのです。そのため、私は文系ですが、テクニカルなことで困ったことはほとんどありません。

ー変化が激しい時代だからこそ絶えず勉強し、キャッチアップすることが大事なのですね。ちょうどテクノロジーの話になったのでお聞きしたいのですが、今注目すべきテクノロジーやビジネスって何でしょうか?

中嶋 まあAIはインターネットみたいにものになっていくと思います。

90年代はインターネットが普及し、アップルやIBMなどのPCメーカーが台頭し、2000年代のソーシャルネットワークの登場では、FacebookやTwitterなどが広がっていきました。そしてこれからはAIでしょう。身の回りのあらゆるものにAIが組み込まれていくようになると思いますね。

一方テクノロジーだけでなく、ソーシャルビジネスなどにも注目しています。たとえばCode for Japanというアメリカ発祥のNPOがありますが、これはエンジニアが地域課題を解決しようというプログラムです。ゴミ、セキュリティ、宅配、介護、ヘルスケアなど、政府や自治体ができることにも限度があるので、そこをビジネスで解決していくような動きにも期待したいです。

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人と会うのが好きで、新しいビジネスを創ること、テクノロジーに関心がある人はVCに来て欲しい

ーありがとうございます。では人生観、仕事観、これからのビジョンについてお聞かせください。

中嶋 よく学生に言ってるのは、学生が20年くらい生きてきた人生観でキャリアプランを固めてしまわないほうがいいということです。壮絶な経験をしている人は別ですが、だいたい一橋生で壮絶な人生経験をしている人のほうが少ないですよね。なのでまず一生懸命勉強して、働くというのが一番よいのではないでしょうか。ある程度経験を積み、見えてくるキャリアとか仕事観に自分を賭ける生き方がいいんじゃないですかね。

私の仕事観でいうと、学生を含めて、相談には必ず乗るというのを信条にしています。そうすると色々な人が相談にきますが、生の情報に触れることが一番の情報収集だったりします。またその情報から生じた疑問を解決してくれる人を探すのも、ネットワークの拡大につながります。自分に直接関係なくても、他の人を紹介したりするし、それを機に昔の友人と会ったり、そこからまたネットワークが広がったりと、いい循環ができます。

ー確かに、狭い価値観で決めてしまうより、まず経験を積んでみるのは大切なのかもしれません。それならどういう会社がいいとお考えですか?

中嶋 会計士や弁護士など、やりたいことが決まっているならいいですが、特にこだわりがない場合は、特定の領域で入ってしまうより、多様な人・業種と仕事ができるところがいいのではないでしょうか。

私自身、今VCをしているなんて入社当時は想像もしてなかったですし、そもそもVCの存在すら知らなかったわけですから。前社のVCにいた時でさえ、自分でVCをやるとは思っていませんでした。

社会が安定していてイノベーションが生まれづらい時代だったら、早期にキャリアを決めてもいいのかもしれません。ところが、スマホが誕生してまだ10年経っていないように、社会環境やテクノロジーによってライフスタイルや未来ががらっと変わる時代です。なので、一つに決めてしまうより柔軟に方向転換できる人生のほうが楽しいんじゃないですかね。

私も20年後、30年後はどうなっているかは分かりません。VCは続けていると思いますが、投資領域が変わるかもしれないし、自分でも何か事業をやってるかもしれない。計画通りにいかないことのほうが多いので、あまり限定的な未来を描かないほうがいいと思います。

ーガチガチに決めてしまわずに柔軟な姿勢でいることが大切なんですね。では最後に学生へのメッセージをお願いします!

中嶋 もし、人と会うのが好きで、新しいビジネスを創ること、テクノロジーに関心がある人はVCに来て欲しいですね。一橋は金融に行く人が多いと思いますが、メガバンク、証券、投資銀行、など色々ある中で、VCという選択肢があることも知ってほしいです。VCは今とても面白い仕事だと思います。若くて志が高く情熱的な起業家と仕事するのは非常にワクワクしますし、この業界にいる人たちも、起業家を応援して日本や世の中を良くしていこうという想いを持った人たちばかりです。

ともかくVCになりたい人、興味のある人はぜひ会いに来てください!ありがとうございました。

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