なんでわざわざ大手コンサルからベンチャーに転職したんですか?

前編では、コンサルタントしてバリバリ働いていた時代のことをお聞きしました。後編では、そんな松見さんがなぜどベンチャーに転職を決意したのかや、大企業とベンチャーの違いなどについて迫っていきます!


松見咲子さん
2012年一橋大学社会学部卒業。新卒で入社した野村総合研究所にて経営コンサルタントとして4年間勤務した後、法人向けのクラウドサービスを展開するベンチャー企業へ入社。1年間勤務し、今年5月末に退社。

 

〜転職を決めた理由〜

ー後編では、4年間NRIで働いた後、ベンチャー企業に転職された理由について伺っていこうと思います。

松見 まず事業会社に行きたいと思った理由は、大きく2つです。1つ目は、先ほど話した様にコンサルだと最後まで関われないことへの不満が大きくなったから。2つ目は、自分が数年後までにどのような経験を積んでどのように成長しているか、イメージが描きにくかったことです。コンサルはプロジェクト制の働き方で、次にどんなプロジェクトに入るか?というのはお客さまの状況や自分の稼働状況次第なので、こういう経験を通してこういうスキルを身に付けたい、と思ってもなかなか実現せず、プロジェクト毎にモチベーションが上下してしまうことも多かったですね。

後は、コンサルにいると一通りのスキルはつくようにも思いますが、逆に私は営業ができますとか、マーケティングができますとかっていう分かりやすいスキルがないことが不安で、20代のうちに一つ尖らせる部分を決めないと器用貧乏になってしまうのではないかと思いました。事業会社に移るにあたっては、組織の論理が働く大企業よりも、ベンチャー企業の方がフラットにどんどんやりたいことをやりたい人と一緒にやれるのではないかと考えました。

 

ー何年目くらいから迷われていたのでしょうか?

松見 元々、国に関わる仕事がしたくてNRIに入ったのですが、入社1、2年目で色々なプロジェクトを経験する内に、国の役割は民間で生まれた動きが大きなうねりとなったときに、取りまとめて政策や制度に落とし込むことだと思ったんです。


私はどの立ち位置にいたいのかということを考えた時に、民間の側で小さくてもいいから動きを作り出す側に回りたいということを強く感じました。ただ、せっかくコンサル会社に入ったのだから、まずはコンサルの立場から民間企業を見てみようと思って、民間企業を主なクライアントとする部署に移らせてもらったんです。ですので、悩み始めてからもまずは社内でできることをやりながら自分の考えを確認していく、という感じでした。

 

ーなるほど。4年かけて検証をした結果、やはりここではないと思ったんですね。転職先のベンチャーには、どのような経緯で入社を決められたのでしょうか?

松見 社員数が一桁台のようなとても小規模なところに行きたかったのですが、そういう会社は公に募集していない場合も多いので、一応転職エージェントに登録したりもしたのですが、最終的にはNRIの仕事で知り合ったエンジェル投資家の方から紹介して頂いたんです。

当時社員数はまだ8人で、会社もこれから伸びそうだと思いましたし、やってみたかったマーケティングの職種で入れるとのことだったので、これは行かない理由はないと思いました。本当はBtoCの領域に憧れていたのでBtoB領域の企業に行くことについては少し悩みましたが、サービス的にもコンサル時代の知見が活かせそうな領域であったため、いきなりBtoCのマーケティングで右も左も分からなくなるよりも、少し近しい部分がある方が良いかなと思って覚悟を決めました。

 

〜マインドの違いに気づく〜

ー実際入ってみて、コンサルで身につくスキルとベンチャーで求められるスキルの違いはありましたか?

松見 スキルというよりは、求められるマインドが違うと感じました。コンサルは、あくまでも客観的にみて最良と思われる情報を提供することが仕事ですが、特に事業会社の中でもベンチャーでは、スピードや結果が優先されるんですね。実際、私も入ってすぐの頃、ある業務に必要なツールを入れたいが、どのツールか知りたいから調べてみてとお願いされて、初めはコンサル時代の様に比較表を作ってランキングをつけてたんです。

そうすると、「比較表を作る時間があれば、良さそうなものをとにかく入れてみて、良かったらそれでいいし、ダメなら次のを試せばいいんだよ。」っていうことを教えてもらったことがありました。どんどん試してかたちにして、ダメなら次の手を打つ、ということが求められるように感じます。

また、理屈通りに進まないようなことの方が多いので、臨機応変さや柔軟さも必要だと思います。頭で考えたことを教科書通りにしか当てはめられないような人は上手くいかないかも知れません。

 

〜ベンチャーに合う人、合わない人

ー松見さんは、マインドをうまく切り換えられたんですね。他に、ベンチャーに入ってみて感じたギャップはあったのでしょうか?

松見 大きく3つありました。まず1つ目は、想像以上に地道で、何でもやらなくてはいけないということです。ベンチャーでは効率化のために色々なツールを試したりしてある種大企業より効率化されている部分も多い一方で、整備されていない部分や人員不足なども当然あります。そんな中で、雑務はもちろん、直接的に自分の業務範囲でないかも知れないような作業もしなくてはいけません。というかそもそも業務範囲なんて決まっていないです。ある決まった業務をバリバリやりたいという人は、合わないかも知れません。

2つ目は、方針や計画の変更は当たり前だということです。ベンチャーはスピード感を持って様々なことが決まっていきますが、それらが変更になるスピードも早いです。朝令暮改なんて言葉がありますが、まさに朝決まったことが夕方に変更になるなんてことも珍しくないと思います。決まった通りに物事を進めたい人、特定の方針に固執する人にはつらいかも知れません。

 


3つ目は、当然なのですがベンチャー企業も組織であるということです。規模が小さかろうと、組織の論理は存在します。もちろん企業規模や風土によってだいぶ異なってくるとは思いますが、ベンチャーだからフラットとは限らないし、企業によってはむしろ強力なトップダウンのところもあると思います。また、業種や人間関係などフィットしない部分があったときに、大企業であれば配置転換などで解決できる可能性があるのに対し、小規模の場合なかなか打開策がない可能性も高いです。

このように、ベンチャーと大企業とではだいぶ違うので、そもそもの向き不向きもあると思いますし、またベンチャーと一口によっても規模やステージによってだいぶ異なってくるので、相性も大きいと思います。そして、ベンチャーというのは規模もステージも変わっていくものなので、どの時期に入るのがベストかということも人によって異なると思います。

入社時点ではフィットしていても、企業と自分自身が成長していく中で乖離が出てくるということも当然あると思います。そのときは別の道を歩むのがお互いにとってベストかも知れません。定期的に、冷静に判断するタイミングを作ることが大事だと思います。

 

〜事業会社に行ったからといって、、、〜

ーNRIから転職した理由として、「最後まで関われないことへのもどかしさ」を挙げられていましたが、その部分は満たされたのでしょうか?

松見 ベンチャーではむしろ実行してなんぼというか、アウトプットが求められますし、私は主にWeb系の施策をやっていたので、ABテストやWebページ作成など、すぐにかたちになったり検証できる面白さがありました。

ただ一方で、ある程度大きな施策になると自分が企画段階から関われるとも限らず主に実行の部分だけを担ったり、方針変更により施策が途中で頓挫するというようなこともありました。事業会社に行ったら川上から川下まで綺麗に流れて、どんどんPDCAが回せて…というわけではないんだなと痛感しましたね。

 

〜若い頃は意識が高くて、頭だけで考えがち〜

ーやはり外から見えるのと中で実際に経験してみるのとでは違うということですね。退職されたとお聞きしましたが、、次の会社は決められているのでしょうか?

松見 一回まっさらになって考えたいと思って次どうするかは決めていないんです。この一年くらいでよく考えるようになったのですが、頭と心と体のバランスって大事で、この3つが整ってないと幸せに生活できないと思うんです。どこかを無理するとそこに引っ張られてバランスが崩れて来るんですね。

一橋にはありがちかもしれませんが、若い頃って意識が高くて、頭だけで考えがちな気がするんですよね。振り返ると、私も単純にこれが好きという感覚的なことよりは、コンサル行って次はベンチャーで経験を積んでステップアップをしなきゃいけないって頭で考えていた部分もあったと思います。

頭だけで考えていて体に異変が出たり、気持ち的に何か違和感やつらい部分があったりすると私は幸せにはなれないと思ったので、次の仕事を考える上ではそういうところを大事にしたいですね。今回の転職を通じて、自分のバランスがいつ崩れるのかを知っておくことはとても大事だと思いましたね。

人によっては、例えば理不尽なことがあってもスッパリ割り切って、キャリアアップやお給料の方を優先できるタイプの人もいると思います。でも、私は理不尽なことにいちいち怒ってしまうタイプの人間で、好きなことで徹夜するのはいいけど、そうじゃなかったらお金もらってもやりたくないんですよね。そういう自己理解は、働く中で進みました。

今は、頭、心、体の三角バランスを整えた上で、自分がどの範囲なら崩れないんだろうということを落ち着いて考えたいと思っています。

 

〜学生の時に考えない意外な盲点〜

ー学生の時も自己分析とかで、自分は何にモチベーションを感じるのかを考える機会はあったと思いますが、やはり見えない部分があったのでしょうか?

松見 皆さん何がやりたいかとか、どういうことでモチベーションが高まるかなどプラスの側面はよく考えると思うんですが、どういうことが許せないか、耐えられないか、という負の側面はそんなに考えていない気がします。なかなか、社会に出るまで、本当に嫌なことや嫌な人に直面して耐える経験ってないと思うんですよね。

そういう意味では体育会をやっていた人の方が厳しい練習や上下関係などで時には理不尽な思いもして、ストレス耐性が強いというのは一理あるのかも知れないですね。でも、理不尽を何も疑問に思わずスルーできることがいいのかというとそれは別の話だと思うので、そこは自分がどういう範囲なら耐えられる・許せるのかを考えた方が良いですね。ただ、学生の内に全部分かることはなかなか難しいと思います。

 

〜頭だけじゃなくて、心と体にも気を配って〜

ー社会人にならなければ分からない部分もあるというお話でしたが、学生の時に立てる仮説の精度を高めるためにできることはないのでしょうか?

松見 仮説検証を学生のうちからできるだけ沢山繰り返しておくことで、精度は高まると思います。よく、色んな人と会って色んな経験をしておいた方が良いって言いますが、その時にただなんとなくではなくて、しっかりと仮説を持ち、検証をする頭を持つことを忘れないことが大事だと思います。そして、仮説検証の観点として、こうあるべきっていう頭だけじゃなくて、心と体の部分、五感や直感にも気を配るといいと思います。また、「幅を広げる」ことを意識して経験していくと、自己理解が進みやすく、仮説検証もしやすくなるかも知れません。


例えば私は、「大企業×コンサル」から「ベンチャー×事業会社」に転職しましたが、180度違う環境に身を置いたことで、大企業とベンチャーのこと、コンサルと事業会社のこと、その中での自分について、理解が進んだように思います。若いうちから両極端を知っておくと、自分はこの辺かな、という目星がつけやすくなるのではないでしょうか。

 

〜頭、心、体のバランスを大切に〜

 

ーありがとうございます。最後に一橋生にメッセージをお願いします。

松見 結構、具体的な話になるのですが、ベンチャーって今ブームなので、一橋からも新卒で入る人も増えていると思うんです。ただ、ベンチャーは自分がフィットした場合、大企業に行くよりも加速度的に成長できる可能性があり楽しいと思うのですが、フィットしなかった場合、八方塞がりになってしまう可能性もあるっていうことを忘れてはいけないと思います。

ベンチャーでは基本的に育成はしてもらえないので、自分がそこで育成されなくても育つ自信があったり、きちんと果たしたい目的があるならいいと思いますが、自分が出来ないことが沢山ある中でそれを許容してもらったり、足りないところを伸ばすように仕事を上手く振ってもらうことはベンチャーに望んではいけないですね。

あともう一つ、さっきの仮説検証の話の補足になるのですが、色んな人の話を聞くことはいいのですが、最後は自分事に持ってこないと、意識の高い頭だけのペラペラな人になって、心の部分が壊れてしまうと思います。情報過多になると、捌ききれなくなって何が正しいのか、自分の考えは何か、というのが分からなくなるんですよね。ですので、人に会った後に、1人又は少人数できちんと振り返る機会を設けて、自分の仮説に繋げる作業をすることをオススメします。

最後に、仮説検証すること、そして「違う」と思ったときに別の選択肢を試すこと、それさえできればどんな経験も無駄になることはないと思うので、まずはやってみるということを大切にして分自身の幅を広げていきながら、頭・心・体のバランスが心地良い場所を見つけていってもらえればなと思います!

ーありがとうございました!

 

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