「授業で挙手することで芽生える種もある」「”やりたいこと”を求めないで」 種を植えた男達 最終話

一話、第二話では森田さん(画像左)と松浦さん(画像右)に農業との出会い、「ぽてと」や「よんあーる」、農業に対する想いを伺いました。最終話ではお二人の将来についてと一橋生に対するメッセージをお伺いします。

 

~森田さんの将来~

ーまず森田さんは卒業後についてはどのように考えられていますか?

森田 う~ん、農業に関わる、というのは絶対ですね。今更退けないというのもありますし、「ぽてと」や「よんあーる」で本当に多くの農業関係者の方にお世話になりました。わざわざ福井の農場にご招待いただいたりJAで大勢のおっちゃんに囲まれたり(笑)。そういう人たちに恩返しをしたいです。

 もう一点、僕は結構飽きっぽい方なんですけど、農業だけはなぜか10年も続いている。しかも、大学に入るときも、ぽてとを引退したときも一度畑から離れたはずなのに、気づけばまた戻っている。それならば、もう少しやってみようと思ったんです。ですが、農業に関わる仕事をすると言っても、何をすればよいのかよくわからない、というのが正直なところです。「ビジネスのマインド×農業の基本的な価値観」の両方で考えている人は意外に少ないので、その両方を繋げて農業でお金を生み出す仕組みをつくりたい、というのが基本ではありますが、とりあえずいろいろやってみてその中から繋がるところを拾っていって…という具合に、不確実性を楽しんでいるんでしょうね。

ーそのモチベーションはどこから来るものなんでしょうか?

森田 まずは、自己評価として一年の頃からさすがに周りの人とはちがうことをやってきた、という自負はあります。価値の有無は別として。であれば進路も「いい会社はいってお給料もらう」みたいな、ありふれた多くの人と同じ進路を取りたくない、と感じています。

また、外の世界には頑張ってる人がたくさんいる。身近なところで言うと津田塾の人たちってすごい勉強してるんですよね。そこで自分が何もしてないとあっという間に置いて行かれてしまう。外部の団体の人たちもそうです。そうした人達に負けたくないという想いが大学に入ってからバネになっています。

 

~目立つことは悪いことではない~

ーありがとうございます。最後に、一歩踏み出せない一橋生の人に一言お願いします。

森田 大きなことは言えないですけどね、同じ学生ですし。でも、今大学での転機を振り返ると一年の四月二日の最初のクラスの集まりでクラス代表を決める際「誰がやる~じゃんけん?」みたいなグダグダした空気になった時に「やりたくない人がやるくらいなら自分が」って手を挙げたことですね。そうしてKODA祭の模擬店運営に関わった関係で知り合いが増えて「ぽてと」設立に至って農業にもどって…いつの間にか今の自分になっています。

 元々僕はコミュ力もリーダーシップもある方じゃなくて、挙手も緊張するけど、1000回に1回くらいはそれで何かが変わることがあった。例えば2年の冬に「自然資源経済論」という講義で挙手して「農業のサークルやってて…」みたく説明したら翌年には自分が登壇することになったり。こういう風にたま~に広がることがあって、これが楽しくてやってます。

  

なので、もし一歩踏み出せない人がいたら「とりあえず手を挙げてみたら?」って言いたいです。

一橋の人ってみんな静か、マジメで手を挙げただけで目立ったりするけどそれって何か変わるためにすごく大事なんですよね。それが講義で手を挙げる、くらいのことだったとしても世界が広がる可能性があるからひるまずやってみてほしいです。

 

~松浦さんの将来~

ー森田さんありがとうございました。では松浦さんの将来の展望をお聞かせください。

松浦 僕は一旦農業から抜けて、外資系IT企業に就職します。農業に取り組んでる人って森田みたいな熱くて変な人がいっぱいいてすごく魅力的なんですけど、外部で得たスキルを活かせている例はまだまだ少ないので、農業と全然関係ないところで武器をつくってそれから戻って価値を発揮したいです。

ー”武器を持つ”ために外資系のIT企業を選んだのはなぜですか?

松浦 別にそこにいけば正しい武器が得られると確信したわけではないんです。インターンも複数社でやってきましたが、「明確にこれこそが必要なスキルだ」と言えることなんてないなと。ただ、たとえば入社して自分の役割もわからないまま、ジョブローテーションで数年ごとにぐるぐるやって、というのは武器を持つ、という観点からはまずいな、と思いました。何が武器になるか仮説をたてて、自分の仕事をある程度自分の意思でコントロールできるところ、という意味で入社させていただくことにしました。

あとは、外資系は比較的ですが多様な働き方が需要される傾向があり、、自分のやりたいことをやりやすいという点もありましたね。そうして仕事以外の時間で農業に関わりつつ、働きながら武器をもっていずれは農業に帰ってくる、というイメージです。

 

~「やりたいこと」という呪い~

ーでは、同じく一橋生に一言お願いします。

松浦 一番言いたいのは、「やりたいこと」に縛られないでほしい、ということです。

ーというのは?

松浦 今ってみんな「やりたいことがない」とか言うじゃないですか。それって「やりたいことがなきゃいけない」ということを前提としてますよね?大人や就活サイト、人材会社なんか口を揃えて「Willを持とう」と言いますよね。でも僕はそうは思わない。なにか崇高な「やりたいこと」、例えば世の中をこうしたい、とかがないとなにも始められない、ではなく、自分が楽しいと思ったことを片っ端からやっていけばいいんですよ。

 例えば乃木坂がめっちゃ好きでオタクです、ってひとがいたらそれでいいじゃないですか。

そう考えると「やりたいことがない」「自分なにもしてなくて…」みたいな人って、実は「立派なこと・履歴書に書けることフィルター」を通してるだけで、ゲームでもなんでも実はやってて楽しいことがあるんじゃないかと。であればその自分の好きなことをいっぱいやればいいと思います。

ー松浦さんの場合、それが農業だったわけですね?

松浦 分からない(笑)。あくまで今はそうってだけで、5年後にはもっとはまってるものがあるかもしれない。農業は大学入ってバイトやサークル色々広げる中で面白そうと思って入ってみたらやっぱり、って感じだったので。別に大学生の段階で決まってなきゃいけないものでもないですし、「なにかに熱中してなければいけない」ということもないので焦る必要はないと思います。

ーお二人とも、ありがとうございました。

苗の様子を観察するお二人。メンバーもお手伝いさせていただいています。

今回取材したお二人は、農業に関わるようになった背景や考え方など、多くの面で対照的な方々でしたが、農業への熱い想いはともに伝わってきました。僕は森田さんと違い我を忘れて熱中する一つのことがなく、それがコンプレックスでもあったのですが、松浦さんのような考え方もあるんだ、と分かり気が楽になりました。読者の皆様もこの対談の記事を読んで自分はどういうタイプなのか、と考えてみるのもいいかもしれません。

【過去の登壇情報等】
・明治大学国際日本学部「まちづくり教育論A」講演 (2016年4月)
・一橋大学自然資源経済研究会発表 (2016年5月)
・食と農林漁業大学生アワード(農林水産省主催)決勝進出 (2016年11月)
など

【過去掲載メディア等】
・NHK首都圏ネットワーク取材 (2015年4月)
・国立市内のフリーペーパー「国立歩記」コラム連載 (2015年)
・株式会社農林中金総合研究所「農林金融」シンポジウム模様として掲載(2017年7月)
・日本農業新聞「若者力」
など

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