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634万円と1600万円…読者の皆さん、ぜひこれがなんの価格か考えてみてください。

考え終わりましたか?それでは画面をスクロールしてご確認ください。

 

 

 

634万円…これは、川口康平さんが一橋大学院の教員として働かれていた時の年収で、1600万円というのは、その川口さんに対し、香港科学技術大学が移籍の条件として提示した年収です。今年の四月にこの現状とともに移籍を決定したことを呟いたツイートは大きな反響を呼び、複数のwebメディアによる取材、ニコニコ生放送への出演、ツイートをまとめたTogetterは約35万viewなど、世間に議論を巻き起こしました。

このインタビューを企画したメンバーの江波戸は「このままでは人材の流出が止まらない!」と鼻息荒く取材に臨ませていただきました。
また、今回は取材同行キャンペーンとして、希望者の経済学部三年の八木さんも一緒にインタビューをさせていただきました。

 

川口康平さん(34)
東大大学院からロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに進み経済学のPh.D.を取得し、2015年から一橋大学院にて教鞭を執る。
2017年8月1日から香港科学技術大学へ移籍。

 

〜もがきと、変態〜

ー本日はよろしくお願いいたします。まず、学部から院に進まれるまでの経緯を教えてください!

川口 「よろしくお願いします。まず東大の理科一類に入学したのですが、自然科学以外の学問に興味がわいて、三年次の進振りで文転し、教養学部の表象文化論を学ぶ学科に移りました。その後も学問を続けたかったのですが、いろいろと右往左往しすぎてタイムリミットだと感じたため、一度投資銀行に就職しました。単純にお金とステータスを求めてみたわけです。しかし結局社会科学も学んでみたくなって東大の経済学研究科に入り直しました。」

ー中々紆余曲折があったのですね。

川口 「学部生って、何も考えてない高校時代と就職などのキャリアについて真面目に考えなきゃならない時期の間の変態の時期」だと思うんです。頑張って色々やるけど4年が過ぎてようやく若干何らかの方向が見えてくる、程度のものなのかなと。今思えば色々と試行錯誤してよかったと思います。その時々の勉強は死に物狂いでやってましたが、当時は漠然と「学者になりたい」という以外、どういう方向に進んでいいか全然分からなかった。」

ー試行錯誤、大事ですね。東大の院に進まれた後についてお聞かせください。

川口 「東大の院には修士で二年間学んでからロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(英:London School of Economics and Political Science, 通称LSE)に5年間留学し、2015年にPh.D.を取得して、一橋大学に着任しました。

研究者の世界では「セミナー」というものがあって、各国の研究者を招聘して情報交換やネットワーキングをします。2015年11月に香港科技大のセミナーに呼ばれて発表していまして、その後たまたま自分の専門のジョブが募集されて、その際セミナーの発表を聴いていたシニアの方から応募するよう言われ、出したら通った、という具合ですね。」

 

〜研究者から見た、一橋〜

ー一橋大学へ着任されたきっかけは何だったのですか?

川口 「2015年、経済学のアカデミック・ジョブマーケット(The American Economic Association通称AEA)に参加したのですが、論文やプレゼンの準備が甘く、オファーが一橋を含めた数件しかありませんでした。それに加えてちょっとしたプライベートな事情があって日本に帰る事になっていたので一橋大学のオファーを受けました。」

ー初めて着任された一橋大学の研究環境はいかがでしたか?

川口 「実はすごくいいと思います。給料以外は(笑)。受け持つ授業の単位数が比較的少なく、研究に割ける時間が多いんです。ただ、これは一橋のような研究大学のテニュアトラックの場合であって、一般的な若手研究者はもっと講義に時間を取られています。
研究費の面でも、日本は若手向けの小規模な科研費が豊富に用意されていて、あまり困りませんでした。」

 

〜低い給与の一因は、ガラパゴス化した日本の研究環境〜

ー環境は比較的良好なんですね!正直意外でした。ではなぜ日本の大学の給料は低いのでしょうか?

川口 「予算のキャパシティの問題と、雇用慣行の二つの理由が挙げられます。
一点目について、日本の大学への予算は2000年頃から増加していないのですが、研究者の数は増えており、一人当たりの平均が下がるわけです。
二点目について、例えば米国のPh.D.の雇用は市場連動型です。例を挙げると、Ph.D.を取得した学生Aに対し、投資銀行Bが3000万円の条件を提示しているのに対し、大学Cは800万円の条件だったらAを取ることが難しいので、交渉をもちかけ、Aは1500万の条件を大学に要求する、といった具合です。
さらに、米国の大学が1500万、となればAをほしいシンガポールの大学Dは1700万を提示し…という風に国際間でも人材の奪い合いが起こり、これにより給与が上がっていくのです。研究者獲得に力を注ぐ世界中の多くの国では20年ほど前からこのようなことが行われていますが、日本はこのグローバルなマーケットとの連動が全く考慮されていない雇用慣行が続いています。」

ー二点目は特に興味深いですね。なぜ日本はこの方向に舵を切らないのでしょうか?

川口 「はっきりと分かっているわけではありませんが、大学経営のマネジメントスキルの低さは指摘できるかと思います。
英語圏では一般的な、教員がある段階で研究をやめて管理職になる、マネージャートラックという制度がなく、ある日突然学者が管理職になるので、経験がなくマネジメントできない、ということになります。研究と教育とマネジメントの分業、これが今の日本の大学経営に必要なものではないでしょうか。」

ーそれによって給与の問題を解決する必要がある、と。

川口 「これは予算の問題だけでなく、研究環境一般に通ずるテーマです。予算以外でいうと時間ですね。大学教員のフルタイム換算データの統計によると、2002年の大学教員が研究に割ける時間の割合は46.5%ですが、2013年では35%まで落ち込んでいます。」

ーそれはなぜなのでしょうか?

川口 「仮説ですが、研究費獲得に関する事務作業の増加は考えられます。大学改革により、研究費を得るためには文科省等に申請書を提出し審査を通過しなければならなくなりました。また認可が下りた後も報告義務が発生するようになり、事前審査と事後承認のコストが増加しました。これにより、時間的なリソースが減ったように感じるのではないかと思います。」

 

川口先生は口早に、且つ論理的にお話されており、本当に頭がいいとはこういうことか、と感じました。お話を伺っていくにつれ、問題が複雑かつ深いところに根を下ろしていることが実感させられます。研究に割ける時間も給与も少ないとなれば、研究者の海外流出は今よりさらに進むでしょう。後編ではその問題点と解決策について伺います。

 

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