「長島の教育を変えたるねん」前編

地方創生に燃える男 宮本滉平

東京から6時間、鹿児島県の小さな島「長島」で、教育の現場を大きく変えようとしている一橋生がいる。入学当初、彼は地方に関心などなく、「東京か地元に就職して楽しく安定して暮らしたいなあ」と考えていた。そんな彼が、鹿児島県の小さな島の教育課題解決に本気で取り掛かっているのはなぜなのか?全2回に分けて、彼の地方教育にかける想いと、キャリア意識の変化に迫る。

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かつては

安定を求めていた

 

-奥田「最近、地方創生が学生の間でもホットな話題となってますね。実際僕も興味深いのですが…(笑) 宮本さんご自身は、大学入学以前から地方に興味があったのですか?」

 

宮本「入学前は、全く関心なかったです(笑) 地元を出て東京に来た理由も、「日本の中心を一回見ておけ」っていう塾の先生の言葉に従ったというぐらいです(笑)将来、特にどんな仕事をしたいとかはなかったですし、商社とか銀行で安定的に稼げばいいっていう考えでしたから(笑)」
-奥田「超安定的っすね(笑)1・2年生の頃は、学生団体に入っておられたと聞きましたが?」

 

宮本「GEILという政策立案コンテストを運営する学生団体に入っておりました。大学生になって、学術的な活動もしてみたいという思いもあり、勉強できそうな団体を探していたところにGEILを見つけました。僕自身安定志向で、公務員も考えてはいたので、政策立案には純粋に興味がありましたし、何より学外の学生とも繋がれるというのが魅力的でした。」

 

-奥田「GEILでは具体的に何をしていたのですか?」
宮本「実際に政策コンテストの運営局の立場を経験して、多くの官僚の人にも会う機会がありました。その中で、制度を作って日本をデザインしている人への憧れや尊敬の思いは強くなりましたね。実際、官僚はものすごい使命感を持って働いているのだと知り、やっぱりかっこいいなと。ただ、見えてくるのはいい面だけではなくて、激務だということも知って(笑)

国家公務員もいいけど、転勤が少ない地元の滋賀県庁での地方公務員の仕事もいいなと思うようになりました。GEILで出会った人々の影響で、お金よりも公、社会のために頑張りたいという思いが強まり、徐々に銀行とか商社の興味は薄れていきましたね。」

 

-奥田「安定志向は変わらない中で、民間よりも行政側で制度をデザインしていきたいという思いが強くなったんですね。その後、公務員を本格的に目指すようになったんですか?」

 

宮本「実際公務員への思いはありましたが、勉強は3年から予備校に入ってやればいいやって思っていました。GEILが終わって、ほかに自分が所属しているコミュニティがあまりにないと自覚して(笑)フットサルサークルに加入したんですけど、やっぱり骨のある活動をしたいという思いはあって。色々どうしようかと迷っていたまさにその時に、GEILの友人の紹介で、鹿児島県の長島町で「獅子島の子落とし塾」というプロジェクトがあることを知ったんです。」

 

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心が強く

揺さぶられた

 

-奥田「『獅子島の子落とし塾』とは、具体的にどんなものですか?」

 

宮本「『獅子島の子落とし塾』は、総務省官僚で今は鹿児島県長島町に副町長として赴任している井上さんが発起人となって始めたもので、閉校になって使われなくなった校舎を使って全国の大学生が長島在住の中学生を対象に勉強を教えるというものです。僕はGEILで共にやってきた友達から、そのプロジェクトに参加しないかと声を掛けられて、交通費が支給される上に骨のある活動ができるということに惹かれて、迷わずプロジェクトへの参加を決めました。そこで、実際に井上副町長にお会いして話してみると、官僚なのにめちゃめちゃ面白い人で。「官僚にもこんなにアクティブな人がいるんだ」って感激して、ものすごく官僚熱が上がったのを覚えています(笑)」

 

長島3

 

-奥田「実際にプロジェクトに参加してみて、何が熱かったんでしょうか!」

 

宮本「最初に衝撃を受けたのは、子供たちの勉強に対する意欲です。中学生が目をキラキラさせて僕の指導を聞いてくれて、イベントが終わっても「まだ帰らないでもっと教えてー!」って声もあって。家庭教師のバイトで教えている東京の生徒は親にやらされているっていう感覚で全然意欲的じゃないんですけど、長島には身近に勉強を教えてくれる若者がいないし塾もほとんどないから、ちょっと教えただけで純粋に感動してくれるんです。」

 

 

 

-奥田「子供たちが心から喜んでくれるというのは、なかなか味わうことのできない素晴らしい経験ですね!この経験から、やりがいを感じて長島に通うようになったと?」

 

宮本「長島の子供たちはほんとに意欲的なのに、地理的な要因で教育の機会がないなんて、とにかく不公平だって思うようになりました。でもこのころは地方創生をしたいという感じではなく、目の前の子供たちに教えるのがとにかく楽しくて、その子供たちの手助けをすることに本当にやりがいを感じて。ただただ教えることに熱中していました。もともと教えるのが好きだったというのもありますしね。2回目の長島訪問は今年の2月でしたが、そのころから月に一回ペースで行くようになって、春休みは1回の訪問で2週間ぐらい現地の人の家に泊めてもらいながら、滞在していました。」

 

2016-07-13 16.13.36

 

-奥田「プロジェクトを徐々に大きくするにあたって、うまくいかないことも出てきますよね。活動の中で、どういった点に苦労しましたか?」

 

宮本「やっぱり僕たちは全く別の地域から来た大学生ですから、地元の人々に受け入れてもらうにはそれなりのアウトプットを出さなくてはいけません。僕たちの活動も、最初は定員割れしている状況でした。しかし、本来のイベント以外にも、自主的に島に赴いて学習会を開催したり、地域の読み聞かせ活動に参加したりと、根気よく続けていくうちに、子供たちやその保護者からほんとにいい評価をもらえるようになり、おかげさまで今では本来のイベントは定員オーバーになっています。

様々に意見が分かれている人々の心を動かして方向性を揃えていくというのは、難しくもありますがやりごたえは十分です。町の人からも「是非またやって欲しい」と声が上がるようになったのは、大きな進歩だと言えます。その上、活動を通じて、自分のキャリアへの考え方も大きく変わっていったんです。」

 

宮本さんの心を大きく動かし、熱中させてしまった長島のプロジェクト。彼のキャリア観は、この経験を通じてどのように変わっていったのか?後編に続く。

後編